2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ドゥーグル・J・リンズィー『出航』+YouTube(「俳句」2009年7月号句評に連動 2009/06/26)

「俳句」2009年7月号で、ドゥーグル・リンズィー氏の句集『出航』評を書いてます。以下、句集読んでいてやってみようとおもった画像コラボ企画をゲリラ的に。 ドゥーグル・J・リンズィー『出航』+YouTube 有人潜水船「しんかい6500」で初めて深度六五…

芭蕉の「恋」と「かるみ」(2010/02/10)

芭蕉の「恋」と「かるみ」 中村君もひいている高橋睦郎さんの以下の指摘、前から気になっていた。 「季節感を表す詞を季題としたコンセンサスとはどのようなコンセンサスか。万葉時代の相聞が平安貴族社会で特殊化された恋の、色好みの、雅の感覚のコンセン…

自由律俳句の近代(初出『鬼』2012年28号)

自由律俳句の近代 はじめに いわゆる自由律俳句の作家と言えば、尾崎放哉と種田山頭火が人気のツートップで、大手書店にいけばこの二人に関する書籍は何かが常に売られている。しかし、この二名の他は、俳人の間ですらほとんど作品を知られていないのではな…

前衛俳句作家と「絶句」 (初出「俳句界」」2014年8月号)

前衛俳句作家と「絶句」 本稿では、いわゆる前衛俳句における諸作家の生涯最後の句、または最晩年の句を「絶句」として取り上げることになる。とはいえ、もし「前衛」としての矜恃をもつ作家ならば、多くは実人生とその自然に単純に還元されるような句解の補…

青年部勉強会―草堂と動詞、波郷のことなど(初出「南風」2014年6月号「俳句深耕」掲載)  

青年部勉強会―草堂と動詞、波郷のことなど 現代俳句協会青年部は、昨年十一月二十三日「水原秋櫻子の系譜―文学芸術としての俳句」というテーマで勉強会を行った。とりあげたのは、水原秋櫻子、山口草堂、鷲谷七菜子、高屋窓秋、馬場移公子である。 私たちは…

「俳」の近代―山本健吉を中心に(初出『鬼』第32号 2014年7月)

「俳」の近代―山本健吉を中心に 所与のテーマは「俳」の近代についてまとめよとのことである。手続きとして、そのためにはまず通史的に「俳」とは何かをあきらかにできなければならないはずである。しかしながら、ことはそう簡単ではないようだ。 巷間、人に非ず…

「春や昔」攷(初出『鬼』25号 2010年8月)

「春や昔」攷 一、子規の「春や昔」 JR松山駅の正面玄関を出て、正面のバスロータリーに沿って左側に進むと、市電の乗り場へ向かう途中に、周りに比して古く大きな存在感のある子規の句碑が建っている。 ①春や昔十五万石の城下哉 子規 この句は明治二十八…

高い詩性と震災句 高岡修句集『水の蝶』について(初出「現代俳句」2016年4月号「ブックエリア」)

高い詩性と震災句 句集『水の蝶』は、著者の第六句集。よく知られているとおり、高岡修は詩人として高い評価を受けていると同時に、新興俳句の系譜に連なる俳人であり、この句集に所収の句群も、やはり新興俳句や前衛の系譜につらなる高い詩性が特徴である。…

「学問」としての俳句(初出「六花」vol.1 2016 六花書林)

「学問」としての俳句 ここのところ、正岡子規の俳句分類について書いている。もともと子規の「自然」とその後の近代俳句の「自然」についての問題意識から始まった連載の途中で、彼がどうして近世の俳句の分類をはじめたのか、そこから何を得ようと目論んだ…

選の公準―子規の試みについて― (初出『澤』2015年7月号 15周年記念号/特集・選とは何か)

選の公準―子規の試みについて― 初出『澤』2015年7月号(15周年記念号/特集・選とは何か) 一、はじめに 句の選をする/される、という時、その選を皆が納得する選たらしめるための「公共性」を担保するには、それなりのモノサシがなければならないだろう。例…

いま、推奨したい名句集 成田三樹夫遺稿句集『鯨の目』(初出「俳句四季」2016年3月号) 

いま、推奨したい名句集 成田三樹夫遺稿句集『鯨の目』 名句集かと言われれば、ちょっと違うかもしれないが、どうにも気になる句集というのがある。その一つに、成田三樹夫遺稿句集『鯨の目』(無明舎出版 一九九一年)がある。作者は俳優。ご存じの方も多か…

「正岡子規とVR」(初出「季刊子規博だより」2017年3月)

「正岡子規とVR」 (季刊子規博だより 2017年3月) 1 仮感と実感 近年のVR(ヴァーチャルリアリティ、仮想現実)の技術の進展はめざましいものがある。たとえば、いま出ているゲームのいくつかでは、ゴーグルをつけると見ている人の動きに合わせて三六…

子規、虚子の句における神と自然について(初出「鬼」38号 2017年7月)

子規、虚子の句における神と自然について 一、はじめに 芭蕉の「笈の小文」の言葉、「西行の和哥における、宗祇の連哥における、雪舟の絵における、利休が茶における、其の貫道する物は一なり。風雅におけるもの、造化に随ひて四時を友とす。見る処花にあら…

「かるみ」のゆくえ(初出「晶21号」2017年7月)

「かるみ」のゆくえ 芭蕉の「かるみ」の説明を文学事典から引くと、以下のようである。 芭蕉が、晩年、特に積極的に唱えた文芸理念。理屈をきらうところから生れた枯淡で印象明瞭な作風。また、そのような作風を生み出す詩境そのものを指す場合もある。(中…

『現代詩手帖』2017年6月号「〈俳句〉という切実な覚悟 田島健一『ただならぬぽ』」

〈俳句〉という切実な覚悟 田島健一『ただならぬぽ』(初出『現代詩手帖』2017年6月号) 俳句に関わらないものからすれば、俳句は何をどう読んで良いか分からないか、またはどうとでも読めるものではないだろうか。一見してのあまりの情報不足ゆえに。 ただ…

解釈をとりまくものについて(初出『俳句界』2017年10月号掲載「俳句における「解釈」と「構造」」。一部内容の改変がある。)

「解釈をとりまくものについて」 南風吹くカレーライスに海と陸 櫂未知子(「カムイ」) 以下、この句を起点にして考察を進めたい。カレーライスのビジュアルを「海と陸」とみなす見立てと季語(季題)の斡旋の妙が高く評価されているようだ。例えば、坪内稔…